5足で1000円の靴下問題

THE YELLOW MONKEYの歌に

 

この恋は人から見れば5足で1000円の靴下さ

 

という一節があります.

私は年来3足で1000円の靴下を履き続けており,今日はそれに伴うエトセトラについて考察を加えたいと思います.

 

1年に1回,名前がないというブランドの靴下を,3足1000円で買い足しながら,常時10足くらい履き回しています.「靴下は徹底的に目立ってはいけない」というこだわりが,逆にいつも同じものを買うというこだわりのない行動させています.

なんとなく洗濯物籠に5足くらいたまったところで洗濯するわけですが,干して,取り込む際に,ある問題が起こります.

洗濯バサミに吊るされた計10枚の靴下達.年季の入って擦り切れて穴が空きそうなやつ,空いてしまったやつ.真新しく綿がまだ分厚くふわふわしているやつ.これは少し布地の色合いが他ものと違うな,同じものを買ったはずなんだけどな.どれとどれを一緒にとりこむべきか.

元々ペアだったものをペアとして戻してあげるのが人情だと思い,こいつら絶対アベックだ,この方々は長年連れ添った老夫婦だ,と選んでいくのですが,必ず合わないペアが残りますね.それが人生というものですよね.

 

なぜ5足で1000円の靴下を洗濯すると,必ず合わない物同士をくっつけてしまうことになるのか.

 

まぁ,人から見ればまさにどうでもいい問題なのですが,吉井さんの恋に賭けてこの5足で1000円の靴下を考察してみます.

 

1) 利き足によってすり減り具合が違う

私は新品の靴を買うと必ず左より右が先に汚れます.水たまりはいつも右脚でジャンプして着地する時に汚しますし,左手に傘を持って歩くので右脚ばかり傘からはみ出て汚れます.このように,利き足と非利き足では日常動作での負担は意外に大きいのではないかと考えます.私は靴の中敷も常に左よりも右がすり減っており,靴下にかかる負担の左右差もかなりのものなのではないでしょうか.「すり減っている靴下はいつも右足ではく」とか決めてないわりにすり減っているものとそうでもないものがあるので,1回履いた際に靴下に与えるインパクトもなかなかのものではないかしらと予想します.

 

2) そもそも前回から間違っている

新旧10枚の靴下から同じくらいの古さのものを2枚ずつ選ぶとすると,組み合わせは10C2で45通りです.洗濯する際に毎回45通りの選び方からたった1つの正解を選び,それを5日に1回,1年に73回も繰り返すなんで,普通の人間のできることではありせん.

前回までの洗濯で1回でも間違ったとすると,その間違った10足のうちランダムに(大抵はタンスの前の方から取るのでバイアスありそうですが...)3-5足選んで洗濯するのでほぼ正解は選べません.

一度に買った3足は初期はそれなりにダメージ具合は揃っているので,その中でならどのペアを選んでも大差はないのでしょうが,1)で考えたようにボロボロ具合にばらつきに出るのは時間の問題ですので,いずれはバラバラになってしまうでしょう.

 

このように考えてみると,5足で1000円の靴下とは数回洗濯したら元々の相方とすぐに離れ離れになってしまうよう運命付けられている悲しい存在だとわかりました.私は毎日ほぼ間違いなく,左右別々の靴下を履いていたのです(私の場合元のペアが巡り会えるのは20C2 = 190日つまり半年に1回).

 

では毎日左右同じ靴下を履くためにはどうしたら良いのでしょうか?

 

1足ずつ識別できる個性的な靴下を買う?

買った時に裏にこっそりマッキーで「1号」「2号」と番号をふっておく?

いやいや,靴下に没個性と匿名性を徹底的に求める私の信条としてはそんなことはできません.

 

靴下の数だけ洗濯機を買う?

 

うーむ.毎日靴下を洗うことにします.

 

統合失調症の共感仮説(2)

長くなってしまったので続きです.

 

統合失調症という病気は遺伝的寄与が大きく,この病気を発症してしまったら,平均としては次世代に遺伝子を受け継ぐ確率が小さくなる. 

 

だとしたら,

 

統合失調症に関連るすリスク遺伝子がHomo sapiensの長い歴史の中で淘汰されなかったのはなぜか.

 

ここからは全くの私見で特段の根拠もなく,かつ,当事者の方々を傷つける意図は全くないとお断りをして続けますが...

 

私はその原因は

 

Homo sapiensが集団で行動し,共通の信念のもとに協力することにより,繁栄してきたことと関連しているのではないか

 

と考えています.

 

前項で「統合失調症は幻聴とそれによる被害妄想を主徴とする」と述べました.統合失調症の方はよく「テレビでのこの話題は自分に向けたメッセージだ」とか「犬が吠えたから,僕は殺される」「ラジオの電波が私の脳に入ってくる」など,通常関係ないと思われる出来事に特別な意味づけを行います(関係妄想).この現実を超えて過剰に認知する能力,一見荒唐無稽なのでしょうが,その能力がもう少しマイルドだったらどうでしょうか.

人間が密林で狩をしていた頃,木の葉がわずかに風に揺れた音を聞いて,「象がきた!」と周囲に知らせることだったとしたら.

地面から染み出すわずかん湿気を感じて水脈があると言ったり,

ある種の流行病が穢れた家畜から感染すると主張することだったら...

そのような人を集団として抱えていることは,環境からの情報に敏感に反応するということであり,生存競争を勝ち抜くために有利だったのではないでしょうか.

 

少し話を進めて...

農業革命が起きてHomo sapiens集団の人口がある程度増えると,生物としての利害を超えた範囲の人(つまり自分の遺伝子を後世に残すことに関わる血縁を超えた他人)と行動をともにする必要が生まれます.利害関係を共有しない集団は私利私慾にまみれ崩壊するというのが世の常ですので,集団をまとめ,利害を共有するためのシステムを築いた集団は他集団に対して,有利になります.

その非血縁者間の利害共有のために生まれたシステムこそ宗教ではないか.宗教家の神の啓示を受ける能力,及び宗教家の説法を身に迫る体験として共感する能力は自然淘汰の結果,現在のHomo sapiensにある程度備わっているのでないか.そしてその遺伝的基盤こそが統合失調症のリスク遺伝子なのではないか,というのがここでの仮説です(根拠はないですが個人のブログですので許してください).

それら超自然的なものを他者からのメッセージとして直感する能力(共感と言ってもいいかもしれません)はHomo sapiensの標準装備なので,ヒトは芸術に耽溺し,論理的な説明よりも直感を好み,カルトにハマり...など,自分も含めて一見合理的な行動をする人が絶えない事の一つの説明なのかもしれません.

 

ヒトの思考というのはあてにならず,一見合理的に考えているように見えても,条件反射的に環境からの刺激に反射的に反応しているだけで,あとづけで辻褄を合わせているだけという主張があります.いわゆる自由意思はあるのかという哲学の命題ですが,突き詰めて考えるとなかなか興味深いものがありバカにできません.

 

話が散逸してきたのでこの辺で終わりますが,現実を超えて過剰に直感し他者の意志を読み取る(共感)能力はHomo sapiensに備わっており,それらの表象に現れている意味以上のものを読み取る傾向を作る遺伝子を通常より多く持っていると統合失調症という疾患として現れてしまうのではないか,という仮説でした.

 

統合失調症の共感仮説(1)

統合失調症という病気があります.

人類とともに歩んできたと言っていいほど歴史のある病気ですので,定義には諸説あるのですが,便宜的に診断基準をDSM5から主な箇所を引用すると,

 

  1. 以下のうち2つ(またはそれ以上)、おのおのが1カ月間(または治療が成功した際はより短い期間)ほとんどいつも存在する。これらのうち少なくとも1つは(1)か(2)か(3)である。
    (1)妄想
    (2)幻覚
    (3)まとまりのない発語(例:頻繁な脱線または滅裂)
    (4)ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動
    (5)陰性症状(すなわち感情の平板化、意欲欠如)

 

とあり,他にB-Fまで詳細な基準があります.

なかなか噛み砕いて説明するのが難しいのですが,思春期から青年期に発症し,幻覚とそれによる妄想を典型的症状とする慢性疾患で,「自分の悪口を言っている声が聞こえる」「某国のスパイに狙われている」など幻聴による被害妄想が典型的です.人口の1%弱に発症するありふれた疾患であり,某世界宗教の開祖達や,某北日本の神様の託宣を媒介するとされる人々はこの病気である(あった)と囁かれています.厳密な原因は不明ですが,遺伝的関与が指摘されており,いわゆる「精神病家系」と言った言葉は,(真偽と善悪はさておき)この統合失調症(と双極性障害うつ病)を背景にしていると思われます.

人口の1%というのは大変な数字で,多くの社会生活を送ってきた方ならば周囲にこの病気の方がいらっしゃるはずです.私の友人にもこの病気を患っている人がおり,話を聞く度に大変な病気だと思います.彼または彼女は現在,幸いながら快方に向かっているのですが,ご家族にも同様の病気の方がおり.「もし結婚しても遺伝しないか心配だから子供は作りたくない」と当事者自ら言っています.私は当事者が望んだら子供を作る事にはなんら問題ないと考えておりますが,それこそ当事者の言葉にはそれなりに重みがあり,モヤモヤとしながら考えております.

 

統合失調症の原因に関しては数十年前に脳内物質のドーパミンの関与が提案され,現行の医療では主にそれにドーパミンをブロックする薬物療法が行われております.近年の遺伝子解析の成果により,(以前から予言されていましたが)リスク遺伝子を多数もつ人に,身体的,精神的ストレスが加わって発症することが明らかになってきました.また,ちょうど次世代をもうける時期がこの病気の好発年齢であることなどが理由なのでしょうが,統合失調症の方は統計的にもうける子供を数が少ないことが指摘されております(アダム・ラザフォード ゲノムが語る人類全史など複数にありましたが,さらに出典に当たる必要がありますね).

 

つまり,

 

この病気は遺伝的寄与が大きく,この病気を発症してしまったら,平均としては次世代に遺伝子を受け継ぐ確率が小さくなる.

 

ということです.これをDarwinismに照らし合わせて考えると,次の疑問が浮かびます.

 

統合失調症に関連するリスク遺伝子がHomo sapiensの長い歴史の中で淘汰されなかったのはなぜか.